13 かもいと(あるやツヅ歌&あちちツヅ歌)
守議り 遣わす人は
アマクニの アメワカヒコと極まりて
タカミムスビが カゴ弓と
ハハ矢賜いて向けしむる。
この神もまた 忠節ならず
タカテル姫を娶りつつ
葦原国を 宣らんとて
八歳経るまで帰らねば
名無しのキギス 問い下す
アメワカヒコが 門の前
桂の末に仕業見て
ホロロホロロと泣くを聞き
サクメが告げに
「名もなくて天を泣くや」と
ワカヒコがハハ矢を射れば胸通り
飛びてタカミの前に落ち
ケンケンもなく血のハハ矢
タカミムスビはこれを見て 咎む返し矢
ワカヒコが胸に当たりて失せにしを
返し矢恐る もとおりや
タカテル姫の泣く声の天に聞こえて
両親の早ちに屍引き取りて
喪屋を造りて 仮殯(もがり)
送るカワカリ キサリ持ち
ニワトヨ掃きし スズメ飯
ハトはモノマサ ササキ禊
トビ木綿祀り カラス塚
八日八夜 悼み喪をつとむ
タカテルの兄タカヒコネ
アメに上りて この守姿 ワカヒコに
ウルリ分け得ず 血族の者
「君は生ける」と 寄ちかかり
八穂タマユラと惑うとき
怒るアチスキタカヒコネ
「友なればこそ汚地に訪う
吾を亡き身に過つは あら穢らしや」
腹立ちと 喪屋斬り伏せるアオバガリ
提げてカントを去らんとす
昔ナカヤマ道開く
カナヤマヒコの孫娘 シタテルオクラ
タカヒコの怒り解かんと短か歌
詠みて諭せる
「アめなるや おとたなばたの
うながせる たまのみすまる
みすまルの あなたまはやみ
たにふたわ たらずあちすき
たかひこねぞヤ」
この歌に続きも知れりタカヒコも
怒りゆるめて太刀収めミトの雅を
諭さんと応えの歌に
「アまさがる ひなづめのいは
ただせとい しかはかたふち
かたふチに あみはりわたし
めろよしに よしよりこねい
しかはかたふチ」
この歌は後の 縁のあう男女の
鴨糸結ぶ 雛振りはこれ
14 かしまだち(イヅモの国譲り)
この度は タカミムスビの
臣枯れを除く門出のカシマダチ
天地神祀る 守議り
フツヌシ良しと 皆言えば
タケミカヅチが 進みいで
天にただ一人 フツヌシが
勝りて吾は勝らんや
タカギ勇みの ミカヅチや
フツヌシ副えてカシマダチ
イヅモキツキに カフツチの剣を植えて
蹲り なぢり問うなり
御誇りて欺く道を
成らざんと吾ら遣うぞ
その心 ままや否やや!
オホナムチ 答え問わんと
ミホサキの 釣りキギスのイナセハギ
天の答えを問うときに
コトシロヌシが 笑みす顔
吾 鈴明にて 両親に
ホロロ鳴けども 鉤の鯛ぞ
魚と斬るも 愚かなり
タカマは民の 笑みす鯛
いとかけまくぞ
御言宣 吾が父去らば
諸共の 返事なせば またひとり在り
という間に 現わるる タケミナカタぞ
千曳き岩 提げて 誰か吾が国を
忍びしのびに落とさんや
いで 吾が力 比べんと
取る手も岩のミカヅチが 捉えて投ぐる
あしかびの 恐れて逃ぐる シナノ湖
スワと言うとき畏みて 吾を助けよ
この処 他へは行かじ 背むかじと
言えば助けて 立ち返り
問えば答える オホナムチ
その子のままお 二守へ
吾が子去りにき 吾も去る
今吾去らば 誰かまた
あえて慣れなん者荒らし
吾がクサナギのこの矛に
平したまえと言いて去る
逆うは斬りつ 従らうは褒めて
諸守率いつつ 天に帰れば
コフの殿 政を執りて御宣言
汝 フツヌシ
天地自然の 通る導き 盛んなり
またミカヅチは 姦断ち
稜威を顕す モノノベの涙柔らに
戻すより たまうカンベは「カシマ守」
15 やくもたつ(八雲立つ)
サホコの宮の 朝日神
拝みてい至るイズモ路の
道に佇む下民や 笠簑剣 投げ捨てて
何宣りごちの 大眼
涙は滝の落ちくだる 時の姿や八歳ぶり
「思いおもえば ハタレとは
奢る心の 吾からと」
やや知る今の ソサノオが
悔みの涙 叔父甥の血脈の過ち
償えと 嘆き歌うや
「天にふる吾が身のかさゆ血族の幹
三千日間で 荒ぶるおそれ」
かく三度 肝に答えて 情けより
さすがに濡るるイブキ神
血族の蹲え 共涙 駒より降りて
ソサノオの 手を引き起こす
血脈の縁り 天意得ることは後の忠節
功しなせば晴れやらん
吾を助けて一途に益人討たば
忠節なりと うち連れ宿るサタの宮
諸守議り ソサノオが
心を寄する血脈の歌
身の塵干れば 闇は消えて
賜ふヲシテは ヒカワ守
「ハタレ根を討つ 功しや
そこに本居を 開くべし」
八重垣幡も賜れば 再び上る
天晴れて敬い申す 貴し日より
スガワに築く宮の名もクシイナダなり
サホコ邦 変えてイヅモの邦はこれ
天の道以て 民寧く
宮成らぬ間にイナダ姫 孕めば歌に
やくもたつ いづもやえがき つまごめに
やえがきつくる そのやえがきは
八雲立つイヅモ八重垣妻籠に
八重垣作る その八重垣は